Introduction
書庫というものに初めて入った時の感覚は今でも覚えている。
所謂、閉架図書と呼ばれていた大学の書庫である。独特の匂いが鼻をくすぐり、場の沈黙は禁忌の土地へ足を踏み入れてしまったのかと錯覚させた。その緊張感が、ここは外とは異質な空間だという事を知らしめた。だが、本当に異質だったのはその空気感ではなく、膨大な量の本による圧迫感、圧倒的な質量の方だったのかもしれない。その一冊一冊はどれも魅力的で好奇心が刺激され、棚から引き出す一冊が、現実の空間から意識を引き離す。
「From the Book Room」は、一点一点が書庫から引き出す一冊であるような「本」をイメージした。
好奇心をくすぐる、特別な作品を鑑賞者が発見できる事を深く切望している。